障害の受容過程とグリーフケア

障害の受容過程

障害者になった人が障害を受け入れてそれに適応していく過程は、様々な「危機モデル」として提唱されています。上田敏は、第一段階を「ショック期」、第二段階を「否認期」、第三段階を「混乱期(怒り・恨みと悲嘆・抑うつ)」、第四段階を「解決への努力期」、第五段階を「障害の受容期」としました。フィンクは、第一段階:衝撃、第二段階:防御的退行、第三段階:承認、第四段階:適応としました。コーンは、第一段階:ショック、第二段階:回復への期待、第三段階:悲嘆、第四段階:防衛、第五段階:適応としました。

危機モデルは、障害の受容だけでなく、死にゆく患者の心理プロセスや近親者の死を受け入れる過程などにも使用されています。

悲嘆反応とグリーフケア

悲嘆反応には、様々な説がありますが、デーケンの12段階は、他説より数が多いので、大体の反応を網羅しているような印象です。順番に、①精神的打撃と麻痺状態、②否認、③パニック、④怒りと不当感、⑤敵意と恨み、⑥罪意識、⑦空想形成又は幻想、⑧孤独感と抑うつ、⑨精神的混乱と無関心、⑩あきらめと受容、⑪新しい希望、⑫新しいアイデンティティ(立ち直り)となります。しかし、個人差があり、人それぞれみんな違うということを理解しておく必要があります。

突然の死によって悲嘆にくれる家族への対応は、死後の処置への同席を断ったり、話題を避けたり、慰めの言葉をかけるよりも、故人と家族だけ時間をつくるなどの配慮が必要です。

周産期のグリーフケア

グリーフケアは、死別の悲しみを癒すケアのことであり、悲嘆に対する支援のことです。死産をした褥婦に対するグリーフケアも看護師の役割です。対応としては、「つらいですよね」と褥婦に対し、感情の反映(受容と共感)の姿勢で接するのが適切でしょう。「頑張れ」と「大丈夫」、「忘れましょう」と「気にしないで」は不適切な対応です。「次の妊娠について考えましょう」も、褥婦の感情に寄り添った対応とは言えません。

愛する人を失った悲しみは、相当辛い経験です。経験者同士のグループワーク(ピアサポート)などで悲しみを乗り越えられるように支援します。死別後ではなく、死別することが判明したときから、支援は始まります。話題を避けるのは適切な対応ではありません。

在宅ケアには、家族に対するグリーフケア(悲嘆のケア)も含まれます。ですから、ターミナルを迎えた患者、利用者の家族への対応を知っておく必要があります。まず、夜間・休日を含めた連絡体制を整えておきましょう。家族が混乱している時には、積極的に励ますのではなく、落ち着いて最期を迎えられるように支援します。何もできない悲しみを訴える家族に対しては、「そばにいてあげるだけでいい」と伝えることも適切な対応です。また、感情を表出することは良いことだと伝えます。悲しい気持ちを訴える家族に対しては、「そういう気持ちになるのはよくわかります」と受容と共感の気持ちで接しましょう。家族の気持ちを受容する看護師の言動として「最期にしてあげたいことを考えましょう」と言うのは適切です。安静のために静かに見守るよう指導するのは誤りです。亡くなった後のことを話すのも誤りです。指導ではなく、支援という立場で対応しましょう。

主治医が死亡診断を行った後の訪問看護師の対応で適切なのは、遺族の希望に沿って、死後の処置を行うことです。遺族が希望する場合は一緒に行うのも適切です。死後硬直は通常死後2~3時間程度経過してから徐々に始まります。死後の処置は、死亡後2時間以内に行うのが良いでしょう。




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