船員保険の歴史

船員保険は、日本で初めての一般の民間労働者を対象とした公的年金保険として、1939(昭和14)年に制定されました。船員が対象で、年金、医療、労働なども保障する総合保険でした。なぜ船員を優遇したか言うと、戦時体制下で海運業の重要性が高まり、船員の確保・定着が国の緊急課題になっていたからです。船員が引退した際の所得保障や、亡くなった際の遺族保障に対応しなければなりませんでした。

船員保険ができると、一般の陸上労働者を対象とした年金制度も作ろうという機運が高まり、1941(昭和16)年に、労働者年金保険制度ができました。この労働者年金保険は、1944(昭和19)年に厚生年金保険と改称されました。厚生年金保険は改正を重ね、1954(昭和29)年の全面改正で、現在の厚生年金保険の骨格ができました。

戦後の復興期を経て、高度経済成長期に入った1955(昭和30)年頃から、全国民を対象とした国民年金制度を作ろうという機運が盛り上がり、1959(昭和34)年、国民年金法が可決・成立し、1961(昭和36)年に国民皆年金が実現しました。

1986年(昭和61)年に、船員保険の年金部分は厚生年金へ統合され、2010(平成22)年に、船員保険の雇用保険及び労災保険の部分は、一般の雇用保険と労災保険にそれぞれ統合されました(職務上労災保険等でカバーできない部分については、引き続き船員保険制度から給付する)。社会保険庁の廃止により、新たな運営主体として全国健康保険協会(現在の協会けんぽ)がなり、船員の意見を反映させるために協会内に船員保険協議会が設置されました。また2013(平成25)年の改正により、労災の対象とならない傷病について、包括的に船員保険から給付することになっています。

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